口3つなしの『日本書紀』


天文二年1533
『日本書紀神代巻』
「天文二年1533三月廿一日於青蓮院講始同五月六日講終(已上此巻/五ヶ度)環翠軒宗尤/従二位清原宣光蔵」の奥書があり室町にはすでに口なしの「おかみ」字が使われている。
儒学者清原ノブタカ=環翠軒が大永七年1527頃に書写し,天文二年1533に書紀解読の講義をした,赤点はそのときのものらしい。
龗は龍であると説いている。
発音を示す反切もすでに「切」を使用している。
つぎに出てくる「高龗」と「闇龗」は口3つ付きの正字。
さらに高龗と闇龗は同じ竜神の類としている。
口なしと口ありと両方の文字が使われているが,これはスサノオについてもいえることで,素盞嗚と素戔嗚と皿付きとなしの両方が使われている。
京都大学図書館蔵http://hdl.handle.net/2433/886
元和七年1621
左は最初と同じ清原宣賢の『日本書紀神代巻抄』を元和七年1621に書写したもの。
「闇龗」は口なし雨龍,大きい字の本文も小さい字の語義も口なし。
ところが「高龗」の方は大きい字の本文も小字の語義も口3つ付きの正字。
さらにここでは闇龗にもきちんと口が付いている。
口付き,口なしと正確に書き写していることが分かる。
左の龗のルビが「ケイ」に見える。凶[ケウ]のルビと同形に見えるのでやはり[ケイ]=未解決
京都大学図書館蔵http://hdl.handle.net/2433/827
口あり正字と口なし雨龍の混在が上記3点と異なり,闇龗と高龗が口なし,訓注が口ありというめずらしい書紀。
他にも月と日,大山祇が大山底などの誤写があり,口なしは誤写なのだろう。
京都大学付属図書館蔵の年代不詳の写本に見ることができる。
http://hdl.handle.net/2433/24028
つぎは「舎人親王 編 清原朝臣原蔵版 明治17年3月6日翻刻御届同4月出版 上原氏」と扉書のある1884年,上原佐之吉刊行の復刻版。原著の発行年不明。
最初にあらわれる「おかみ」字は雨+龍である。 しかし,そのつぎの「おかみ」2字は口3つ付き。
3つめのルビ「ニイ」に見えるのは「レイ」ではないか。 「力丁」には[リョク・テイ]のルビ。
おかみのルビは,[ヲ]に見える。龗は清音。
写本の系統で「闇龗」は口なし,「高龗」は口ありの伝統があるようだ。
しかし,以上3点はまだ口3つ付きを使用している。雨龍は闇龗の箇所だけである。
国立国会図書館近代デジタルライブラリー
http://www.ndl.go.jp/

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